飯豊鉱山坑内奮闘記

腹ごしらえが終わり、坑内へ入る準備も整いました。いざ突入です。
私が今回初めて訪れる飯豊鉱山で達成しようと思ったことは、次の3つでした。
①最低でも1辺2.5センチの黄鉄鉱結晶を採ること。
②黄鉄鉱の群晶標本を採ること。
③純白のドロマイトの結晶を採ること。
その3つの目標を頭に叩き込んで坑内へ入っていきました。坑は狭いものだったので、それほど強力な照明は必要がないように思いがちですが、やはり効率的な採集のためには明るいに越したことはありません。私はLEDのキャップランプにハンディライトも追加して行く先を照らしました。
準備に手間取って少し遅れてしまいましたが、すぐに仲間に追いつきました。先に入った同行者たちは、行き止まりとなった坑内で採集を開始していました。
初めて訪れる産地では、なかなかいい成果を得ることは難しいものです。私はいきなり露頭には取りつかず、最初にざっと産地付近の状況を確認しました。今入った坑内には、黄鉄鉱の結晶が採れる場所があるということです。しかしその露頭は小さくて、遅れた私は場所取りにあぶれてしまいました。
それでも決してめげてはいられません。周辺部を探索しました。すると離れた所に鉄へスティング閃石のような脈があって、その中に黄鉄鉱の結晶が含まれているのを見つけました。まずはそのあたりを調べると、たやすく母岩付きの黄鉄鉱が手に入りました。その黄鉄鉱の結晶は小さいのですが、まずは持ち帰り標本を数個確保して、岩の上にまとめて置いておきました。
次におもむろに仲間が採集をやっている場所に接近しました。しかし一番いい場所は、先月も来ている助さんが確保している様子です。そしてしっかりと、1辺2.5センチはあると思われる黄鉄鉱の単結晶を拾いだしていました。前に来たことがある採集者はそれだけ多くの情報を持っているので、初訪の者より有利なことは当然です。

そこで私がとった行動は、助さんの足元を探すことでした。その場所で黄鉄鉱は粘土の中に埋もれているらしく、助さんが掻きだした粘土の中に、ひょっとして見逃したものが転がってこないかと思ったわけです。でもさすがに百戦錬磨の助さんのこと、私が甘い汁を吸うことはできませんでした。
何も採れないことは辛いので、見逃された(「そんなのいりません」という声を聞いたような)1センチ角くらいの黄鉄鉱を掻き集めました。次善の策というわけですが、たいした標本にはなりません。
その場所で採集競争に負けた私は、もう一度周辺の探索に出掛けました。そして坑の天井に青い塊を見つけました。床の一部にもありました。どうやら胆礬か銅緑礬らしいのですが、それもお土産に持ち帰ることにしました。乾いたら粉々になってしまうかも知れませんが。

時間の経過とともにあまり採れなくなって、みなさんそろそろやめたくなった様子です。助さんらが「他の坑口を探しに行こう」と言い出しました。助さんは2度目の訪山なので余裕だと思いますが、私はまだ目標を達成していないので、一緒について行くわけにはいきません。許可を得て一人坑内に残りました。
たぶん出て行った石友たちは、別の露頭を見つけてしこたま採集できることを夢に見て行動に移したのでしょう。一人残った私は、採集の成果比べで取り残されることになるのかも知れません。でも仕方ありません。今回はいいものを発見した者が、すべてを独占することができるルールなのですから。
さて一人になったところで、じっくりと露頭を観察することにしました。黄鉄鉱がどのような所から出てくるのか、本当に粘土の中からしか出ないのか、硬い岩の中にも入っているのか。硬い岩の層を叩いて母岩つきを採ろうと考えましたが、黄鉄鉱は出てきませんでした。そうなると、何かが風化して粘土になった層の中にあることが確実に思えました。
落ち着いて露頭の周りを見ると、すぐそばの地面に竪坑がありました。そこには木の柵がかぶせて蓋がしてありました。その半分ほどは開口部になっていたのですが、手前の方は柵の上に土砂が乗っていたので気がつかなかったのです。その部分の地面の土砂を掘っていたら、木の柵と竪坑が出てきたのでびっくりしました。知らずにその上に足を乗せていたら、奈落の底に転落していたかも知れません。しかし、事前に「竪坑がいくつもあって危険」という情報を得ていたので、慎重な行動をしていたおかげで事なきを得ました。
ところが何が幸いするか分かりません。その木の柵にかぶさった土砂の中に、黄鉄鉱の結晶がありました。それは大きなものではありませんでしたが、私のひらめきを呼び起こしました。その竪坑の穴の縁が上の露頭に続くところに粘土の脈があるのを見つけたのです。積もっていた土砂はそこからはがれ落ちたものにちがいありません。竪坑に転落しないように十分気を付けながら、その粘土層を探ってみました。

するといきなり、一辺3センチはあろうかと思われる(現場での欲目で、実際は2.5センチだった)黄鉄鉱の単結晶が1個、粘土層の表面に見つかりました。大いに喜んで、慎重に採り出しました。何せうっかり落すと下の竪坑の中へ吸い込まれていくのですから。
周囲を見回しましたが、他に粘土層の表面に結晶は現れていませんでした。そこであきらめなかったのが長年の経験のなせる技というものです。案の定粘土を掘ってみると続いて大きめの黄鉄鉱単結晶が次々にでてきました。でも粘土層そのものが小規模だったので、出てきた黄鉄鉱は数個にとどまりました。しかし、その近くで母岩付きの標本が1個得られたことも予想外の喜びでした。

目的の①と②を達成した私には、もうそれで十分です。採集品をていねいに新聞紙で包み、密閉容器に入れました。そのあとセルフタイマーで記念写真を撮ってから外へ出ました。外の光が眩しかった!
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コメント
青い石、すてきですね。でも乾いたら粉になってしまうのですか?水に漬けておいたら大丈夫なんでしょうか?
苧環様が黄鉄鉱の採集のために、いろんなことを考えながら頑張っておられる様子が、よく分かりました。適当に地面を掘ったり転がっている石を拾っているだけの私が恥ずかしいです。
投稿: 真希 | 2010年8月 6日 (金) 18時50分
真希様
青い石は、水に漬けておいたら溶けてしまわないかと心配です。今は濡らしたティッシュペーパーでくるんでポリ袋に入れています。どなたかいい保存方法を教えていただければ幸せです。
いろいろ考えながらの採集も、費用と時間をかけて遠路やってきたので成果を得て帰りたいという、欲と二人連れのなせる技でした。褒めていただけるようなことではありませんね。
投稿: 苧環 | 2010年8月 6日 (金) 19時38分